ノーブルウェブギャラリー

在りし日の阿佐ヶ谷住宅

作者名:えんぞう

阿佐ヶ谷住宅を企業サイトの顔にして頂けると聞いてとても嬉しかった。

物件の正式名称は阿佐ヶ谷団地。1958年に竣工した現UR分譲住宅だった。日本の近代建築を代表する巨匠らが若き日に手がけた、郊外型住宅の理想として設計された。当時の価値で1億円近い価格だったことから、販売は大変苦戦したと聞く。法規制で個別の増改築ができず、社宅としての法人所有も多かった為に、分譲10年で早速出た再開発動議は紆余曲折を経て2013年の今になって決着した。

直近数年は時空から切り離された極楽浄土の様な場所だった。物件は老朽化し、所有者の殆どが外部で暮らし、犯罪抑止の観点から空き家にはベニヤ板が貼られ、ただただ在りし日の記憶を陽だまりの中に留め最期の日を待つ真空の場所だった。建替えをめぐる喧騒や自己顕示から来るエゴから隔絶された静謐な場所であった。阿佐ヶ谷住宅自身が人間という生き物をを達観していたのかも知れない。

2013.10.01

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